ささやかだけれど、水源の森
標高も高く、空気も澄んでほのかに淡い、そんな森の中で、コンコンと湧き出でる透き通った清水。
幾筋もの微細な流れを合せて、やがて渓谷となり、平地へと流れ下っていく。
確かに、そういう立派な水源の森はあります。
大河の流れも、そうしたスケールの大きな森が健全に存在し続けることによって保たれています。
実は、青梅の杜も、あまり知られていませんが、多摩川と荒川の水源の森の一つなのです。
杜の西部、石神地区から流れ出る石神川は、直接多摩川に注ぎ込みます。
杜の中央部から湧き出て、東へ向かって走る黒沢川、黒仁田川の2本の流れは、入間川を経て、荒川の本流へと流れ下っていきます。
最大標高454m、面積360ヘクタールの小さな、本当にささやかな水源の森ですが、ちゃんと一人前に分水嶺を持ち、杜の中でゆっくりと育まれた一滴一滴の清らかな水は、やがては、多摩川や荒川の雄渾な流れを形成することになります。
沢の 水量も確実に増えてきました。
木洩れ日を浴びて、キラキラと輝く水面を眺めながら、ふと思うことがあります。
今、沢に落とした一枚の木の葉も、運が良ければ、川の流れを辿り、東京湾にその身を浮かべることになるのかもしれない。
川の流れは森が育みます。
そして川は海へ流れを注ぎ、海の水は蒸発して雲になり、森に雨を降らせます。
森、川、海と続く悠久の連環の中で
多くの生き物達が、それぞれの生を
精一杯に生き、そして輝くのです。
そして、その連環の中で、輝く生命達の営みを護る為の仕事をしている、いや、させて頂いている、そのことが、私たちの喜びでもあり、プライドでもあります。
今年の夏もまた、ゲンジボタルは、幻想的な光の演舞を見せてくれるでしょうか。
石神川で寄り添うようにして厳しい冬を越そうとしていたタゴガエル達は、無事に春を迎えることができるのでしょうか。
深い森の中で、遠い、あの大きな青い海原に想いを馳せながら、細く険しい山道を歩く一日もあるのです。
koga