今年のドングリ そして一匹のリスの話(その1)
今年の青梅の杜のコナラのドングリは、大不作です。
数千本あるコナラの樹の内、ドングリをつけている木は、数本しかありません。
森を歩いていても、アラカシやシラカシのドングリは時々目につきますが、
コナラのドングリには、一日歩き回っても、数個位にしか出会うことができません。
青梅の杜では、毎年ドングリを拾って植林の為のコナラの苗を育てています。
先日も雨の中、ドングリをつけているコナラを捜して杜の中をさまよいました。
すると・・・・
ハイキング道沿いの一本のコナラの樹にふさふさというか、ぽしょぽしょというか、
尻尾がゆらゆら動いています。
ちょっとわかりにくいですが・・・
木々の間を動きまわっていたのは一匹のニホンリス、ムクムクとした丸まっちい体で、
一本の木を上ったり下りたり、4本の手足でひっしと木の幹に抱きついて、
樹の反対側に回ったり、らせん状に回転しながらすべりおりてみたり、
まるで遊んでいるとしか思えません。
雨音に気配もかき消されていたのでしょう、私が、すぐ木の下に来ていてもお構いなしです。
・・・が、やがて、じっと見つめる視線を感じたのか、木にしがみついた恰好のまま、
短い首を捻じ曲げて、私を振り返りました。
はっきりと、視線があいました。
凝固するニホンリスと私。
1、2、3と息を整える時間の経過後、身を翻してリスは、ダーッと梢へと駆け上がっていきました。
梢にたどりついたリスは、しばらく、じーっと身をひそめていましたが・・・
やがて、梢の先端から、ハイキンング道の反対側から枝を延ばしているヒノキに飛び移りました。
さらに、1本、2本と木から木に飛び移っていったのですが、枝の動きと音で、
下から見ていて、 その逃走経路は一目瞭然です。
リスの移動先に一本のコナラの樹が見えました。
リスは、基本的にドングリの木が大好きなので、きっとリスもその木にやって来るに違いないと
私は森の中に入って、下からカメラを構えて待ちうけておりました。
案の定リスはその木に飛び移ると、するすると下に下りてきました。
たぶん、リスにすれば、何本も木を飛び移ったので、
「さっきの怪しげな奴は完全にまいてやったぜ、へん、チョロイもんだぜ」
みたいな感じで、意気揚々とするすると滑り降りてきたに違いありません。
ところが、安心しきって降りてきたその先に私がいたわけで、瞬間、ぴたっ、と停止して、
しげしげと私を眺め、それからくるりと反転して木の頂に逃げ戻り、
そして、あわてふためいて、木から木へ飛び移ってどこかに行ってしまいました。
私に気が付いた瞬間、
「えっ、何でそこにいるの?!」という声が聞こえてきたようで、
固まったまま、小首をかしげて私を見つめているその表情が、たまらなく可愛かったです。
この話をある人にすると 、その可愛いリスに名前をつけてくれました。
おっちょこちょいっぽいところから、『チョコ』、と。
いい名前でしょう?
さて、その可愛いニホンリスにとって、コナラのドングリは大切な食料です。
そのコナラの話の続きは「その2」で・・・
森のkumasaburou