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おじさん、ボクを連れてって(森のおじさんシリーズ第一弾)

12月4日、おじさんは、青梅の杜の定例パトロールに出た。
木の葉パン工房の前を進み、黒仁田林道に入り、
扇場の手前の谷の入り口からパトロールを始めた。
それから更に、黒仁田林道を進み通称二本スギで車を止め、
谷に沿った歩道を尾根まで、一気に登る。
途中の分岐では、迷わずに東へ向かった。
尾根に出て、二つの小さな頂を越え、扇場を望める尾根の先端まで歩き、
杜の中に異常がないことを確認する。

尾根筋を辿る戻り道の両側は、間伐が行き届きよく手入れのされたヒノキ林が広がり、
その林床には、黄色や紅色に変色したコアジサイの群落やクロモジなどが、
冬の日差しを浴びて目に眩しい。

樹齢80年ほどの境界木とヒノキ林の間を抜けて戻り道を急ごうとしたとき、それが起こった。

「おじさん、僕を連れてって」と小さな声 。あたりを見回しても、人一人いない。


おじさんは、「前期高齢者に仲間入り間近の身にとって、幻聴が始まったかな・・・・・」と考えつつ

足早に通り過ぎようとした。

するとまた、か細い声が。


「おじさん、僕を連れてって」
よくよく辺りを見回すとヒノキ林の縁に、黄色く変色した5・6枚の葉をつけた小さなアカシデの稚樹が、

懸命におじさんを見上げていた。アカシデ


 



そして
「下のヒノキ林に葉っぱがいっぱい茂っちゃうと、お日さまが僕に当たらなくなる。

そうなると僕はもうおしまい。だから僕を連れてって」


おじさんは答えた。
「小さいの、わしは、モミジ専門のシードハンターだ。おまえさんを連れていくわけにはいかないのさ。」


すると、その小さなアカシデは風が全くないのに、まるで女性がいやいやをするように小さく震えた。

風もないのに木が震える様を見たおじさんは、自分の背筋が凍り付きそうになるのを感じた。
でもそれは、おじさんの勘違いだった。

おじさんが踏みつけているヒノキの枯れ枝が、小さなアカシデに触れていて、

彼の微妙な体重の動きと連動した震えだった。


おじさんは、その枯れ枝を拾い上げながら、アカシデに尋ねた。
「おい、小さいの、おまえさん、どこへ行きたい。」
「僕、南のほうに、こぶしの杜と呼ばれる森があるって聞いたことがあるんだ。

素敵な森で、そこには僕の仲間がたくさんいるって聞いたよ。」

こぶしの森

 

 
おじさんは、拾い上げたヒノキの枯れ枝を切り株の上に立てかけて、

鉈を使ってヘラ状に作り上げ、アカシデの根の周りに順に差し込んだ。

最後に差し込んだところで、ヘラを地面に向けて順々に傾けると、

アカシデの稚樹は地面から離れた。

 おじさんは、左掌の中に稚樹の根を大切そうに掴むと麓へ向かって山を降り始めた。

こぶしの森

・・・・・つづく 

 ogura

 

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